専業ババ奮闘記その2 産前休暇③

 娘たちが新居に引っ越したのは、十二月半ば。業者さんを頼み、ほとんどの荷物は新居に運び入れたとのことだ。「こまごましたものがアパートに残ってるので、運ぶの手伝ってくれん」と娘から連絡があり、夫と二人で手伝いに行った。家具もおもちゃもなくなった部屋はがらんとして、タンスの中の高いところに箱が残り、積み残した箱や袋、植物の類が放置されている。娘には指図だけするように言い、脊柱管狭窄症で整形外科に通う夫にも、なるべく移動を少なくしてもらい、三階まで私は五往復した。

 初めて新居に入る。木の香りが心地よい。車に積んだ荷物を運び入れると、夫には一旦帰ってもらった。部屋の壁際には引っ越し屋の箱が幾重にも積まれている。「何をどうすればいい」と聞くと、「私も分からんに」と。妊娠中、出産後というのは、どうも注意力や思考力が散漫になるのか。指示がなければ動きようがないので、「台所はすぐ使うでしょ」と、流し近くの箱の荷解きをし、昼に夫が迎えに来るまでにあらかた片付けた。

 翌日は、夕方、「忠ちゃんが遅くなるけん、風呂に入れさせてくれん」と二人の子どもたちを連れてやって来、その次の日は、保育所の生活発表会ということで、三日連続で娘と過ごしていると、幾十年昔にタイムスリップしたような感覚になる。

 去年度(といっても、今年の二月)の生活発表会が終わってから、我が家も娘一家もインフルエンザの嵐が吹いたので、夫も私もがっつり隙間を覆うマスクをして発表会に臨む。寛大も実歩も、楽しそうに演技をしていて、安心して見ていられた。寛大、実歩を連れ帰って新居に向かい、昼食後、二人を寝かせた。夫は新築祝いに買ってやった掃除機の組み立て、私は重いものを動かしたり、洗面所兼乾燥室の周りの整理をしたりする。あとは、少しずつ片付けるというので、切りのいいところで帰った。

 出産予定まで一か月を切った。お腹の子は二千七百グラムくらいで、いつ出てもいい大きさに育っている。娘の家の片付けは順調に進んでいる。さて、娘たちが我が家の居間を占領したら、私の居場所がない。今度は我が家での私の居場所確保だ。