専業ババ奮闘記その2 同窓会⑤
ご飯のスイッチを入れること、魚を焼くこと、頼んでいたことを夫はきっちりやっていてくれ、玄関で同窓生たちを迎えてくれた。
台所のテーブルは六人掛けで椅子が足りないので、台所と通しの居間に応接台を入れて座布団を敷き、そこに六人と夫、テーブルには義母と私がついた。
Iに配膳を手伝ってもらい、皆で昼食を摂る。「コリコリしたの、何じゃ」とH。「サザエだよ」と答えると、Hは初めて食べると言いながら、「うまいのお」とお代わりをした。「前に、べべ飯食べさせてくれたよね」とI。すっかり忘れていたけど、Iが何度か目に来た際、一緒に海に行ったのだろう。べべをとって、べべ飯を馳走したらしい。貝とりや魚釣りの話を夫がし出すと、いつもは主役のHも聞き役に回っている。私の同窓生の中に、夫はすっかり溶け込んでいた。義母は、そんなやり取りに目を細めながら、箸を動かしている。もうすぐ百歳だというと、「お元気ですね」「若く見えますよ」の声が返ってきた。
サザエご飯、ブリの照り焼き、サラダ、シジミ汁というメニューの最後はデザート。手作りのババロアに、友人からいただいたブルーベリーをジャムにしてかけたものだ。男連中も、残さず食べてくれた。
おまけに、ほんの一握りのルバーブジャムを回した。「微妙な味」という反応で、口直しに甘いお菓子を食べてもらう羽目になったが、どうしても皆に味わわせたかった。
このルバーブ、五年越しでようやくできたものなのだ。夏を越せず一度は諦めたものの、数年後、再度種を蒔き、夏は日よけをして何とか暑さを乗り切った。ところが冬には消滅。またダメかと落胆していたところ、春に新芽が出て飛び上がった。そんな喜びと落胆を何度も繰り返しながら、五年持ちこたえてくれた。半世紀近く前の四年間、共に汗し、涙し、喜びを分かち合った友に、私の大事なものを味わって欲しかったのだ。