専業ババ奮闘記その2 同窓会③
携帯を出して着信を確かめる。かれこれ1時間半は、こうした行為を繰り返しながら、松江駅の構内を歩いたり、ホテル周辺を回ったり。十四時過ぎになるというので、それより少し早めにホテル前まで夫に送ってもらったのだが、途中一回、「今昼食を終え、松江に向かう」と着信があってから、一時間以上経っている。今日予定していたスケジュールを大幅に修正しなければならない。堀川遊覧、松江城見物、いずれをメインにするべきか。堀川を舟でゆったり味わって欲しかったけれども、限られた時間を思うと、松江城一本に絞らざるを得ない。あれこれ考えているところに、着信が入った。「今、高速に乗った」というメール、あと三十分ほどだ。バスの時刻を確認するため、駅舎を通過し、県庁前行きのバスの時刻を記録していく。
同窓会当日、待ち合わせの時刻が大幅にずれたけれども、無事二台に分乗した六人と落ち合うことができた。「だいぶ待たせたね」というKに、「ううん、駅の周りで時間つぶししてた」と平静を保ちながらも、昼食の話題で談笑する面々に、呑気なものだと呆れてしまう。ま、苦あり楽あり、四年間を共に汗した仲間たちだ。元気な顔を眺めまわしているうちに、待ち時間のイライラもやきもきも吹き飛んでしまった。
チェックインを済ませたKに、「宴会場の予約時間があるから、堀川遊覧はやめて、松江城だけにするね」と確認をし、バスで県庁前まで行く。つい三年前まで、嘱託職員として勤務していた建物の前を、半世紀近く前に共に過ごした仲間たちと歩くのは、時間の層がずれたような妙な気持だ。
松江城の天守に上るのは、茨城の叔母と従弟夫婦が来て以来だから、かれこれ十年振りか。国宝に指定されてからは初めてだ。乏しいながら、知っていることを話しながら上っていく。各々が興味津々で展示物を眺め、感嘆の声を挙げるのを見ていると、地元民として心が躍る。