専業ババ奮闘記その2 小旅行③

 パンダの列の待ち時間は四十分とある。「友だちは二時間並んだって」と娘。重い体を奮い立たせて、早朝から出てきた甲斐があった。
 東京行き七時四十五分発の便に搭乗するためには朝から大忙しだった。朝食を掻き込んで薬を飲み、義母のことを夫にあれこれ頼んでから、夫の運転で娘たちが住むアパートまで運んでもらう。肩で息しながら三階まで上がり、部屋に入ると、寛大も実歩もパジャマ姿だ。歯磨きやら、着替えやら、せかしながら手伝い、何とか娘の車に乗り込んだ。空港で搭乗手続きを済ませ、待合で寛大、実歩におにぎりを食べさせる。そんな慌ただしい時間を過ごして何とか上野動物園に辿り着いたのは、開園してそう時間が経っていない時刻だった。
「遅くなるともっと列が並ぶから、まずはパンダにしようよ」と娘が言うので、四十分並びの列に加わったのだ。心配なのは、寛大や実歩がじっと列に並んでいられるかだ。寛大はあと三か月で五歳、実歩は月末でようやく三歳になる。義弟の葬儀に参列するために、五歳の長男と二歳の二男を連れ、急遽東京に向かった時のことを思い出す。家で留守番をしているようにと夫に言われたが、いてもたってもいられず、二人の息子と飛行機に飛び乗ったのだ。その頃の二男ときたら、一時たりともじっとしていない子で、切符を買う際には、長男に見張ってもらい、歩く時には片時も手を離すことができなかった。宿泊したホテルでは、食事中に急に飛び出してエレベーターに乗り込み、その後を追った長男が連れ戻してくるということもあった。だから、四十分がとてつもなく長い時間に思えたのだ。
 ところが、寛大と実歩は落ちている葉っぱで遊んだり、隣に並んでいるおばさんとおしゃべりしたり、そんなに手がかからずに時間を過ごし、パンダにご対面。子連れだったのでゆったりコースを進み、お目当ての香香は寝ていたけど、お母さんパンダが枝を上手に動かしながら笹を食べる様をじっくり眺めることができた。