手作りのくらし2 ベスト(2)

 端切れのベスト作りが始まった。仮縫いをして着てみる。ぴったりだ。お尻が隠れるくらいの丈、思い通りのベストになりそうだ。でも、背中が暖かいともっといいのだが…。そうだ。いいことを思いついた。
 早速百均に向かう。布地が並んでいるところに行き、フェルトのコーナーの前に立つ。六十センチ四方のフェルトの中からお目当ての色を探す。ベストの生地は焦げ茶色だから、黒にするか茶色にするか迷った末、茶色に決めた。帰って仮縫いのベストに当てると、少し明るすぎるけれど、どうせ見えないからいいやと自分に納得させる。肩甲骨あたりをすっぽり覆うように後ろ身ごろに当ててフェルトを裁断した。フェルトはほつれないので、布端の始末をしなくていいので楽だ。
 さて、本縫いにかかる。パーツごとに端ミシンをかけ、後ろ身ごろにフェルトをあてがう。前身ごろには見返しをつける。ベストはパーツが少ないので、肩と脇を縫えばほぼ形はできあがりだ。袖ぐりにはバイアスをつけ、見返しの始末をし、裾の始末をする。ボタン穴をあけ、穴かがりをし、最後にボタンをつけてできあがり。
 ポロシャツの上にベストを着て、洗面所の鏡に映してみる。本当にぴったりで、我ながら上できだとほくそ笑む。後ろを見てみると、プリントされた天使が逆さになっているのが少し気になるけれども、黒っぽい地に、うっすらと描かれた天使なので、誰も気づかないだろう。二階に上がって、コートを上に着ると、ベストがちょうど隠れるので、丈も思い通りのものに仕上がっている。
 その夕刻、帰ってきた息子に、「どう?」と見せると、「いいじゃん」。ところが、後ろを向いた途端、「堕天使じゃん」。ええーっ、わかるのお。